「たーだーいーまー」
ドラゴンズゲートでいい汗流して、心地よい疲れと共に我が家へ辿り着いてみれば。
おんぼろ小屋の住人3名がダイニングテーブルを囲んで、何やら楽しそうに頭を突き合わせていた。
「ぁ、お帰りなさいですー」
「いったい何の騒ぎよ、コレは」
そういえば、と、辺りの空気を嗅いでみる。
清々しくてクセのある、どこかで嗅いだことのある匂い。
「なぁに、香水でもぶち撒けたの?」
「あんたは相変わらず、発想に華とかロマンとか女っ気がないねぇ」
「そういうイェナちゃんもね」
肩をすくめて苦笑いを返してきたセイレーンに一瞥をくれてから、よいしょと手近な椅子に腰かけた。
「で、何の騒ぎよ?」
もう一度問いかけたら、「これですよー」の声と共に目の前にずずいと植物の鉢が突き出された。
独特の芳香がつんと鼻を刺激する。
あぁ、これは。
「頂き物なんですよ。早咲きのラベンダーです」
早咲きの、とはいえまだ若干開花の時期には早いらしく。
先端のわずかなつぼみだけを花開かせた小さなそれは、心許なげに鉢の中に鎮座していた。
「そのうちポッキリ折れそうな細さだな、肥料あげた方がいいんじゃないか?」
「そうですねー、明日になったら園芸店に行ってみますよ」
「水遣りは当番制かい?」
ワイワイと小さな鉢に群がってはしゃぐ3人を眺めて、やれやれと溜め息をついた。
(なんだかどっと疲れたワ。早くシャワー浴びて寝ようっと)
一声かけて自室に下がろうかと腰を浮かしかけた時、もの言いたげな視線を感じて振り仰いだ。
「だいぶ疲れてるみたいだねぇ、ヴィヴィ」
「まぁね。丸一日ゲートに一人で潜ってたから、緊張疲れしてるのかも」
正直に答えたら、目の前の3人は何か目配せし合っている。
無言の会話。アイコンタクト。以心伝心。頼むから私にわかるように声に出して!
願いは虚しく、私の手のひらには無言のままに、小さな鉢が押し付けられた。
「・・・・・・いったい何だっていうのよ」
「ゃ、あれです。ラベンダーの香りには、精神を和らげる効果があるそうなので」
リラックスの必要な人に託しておこうかと思いまして。
無邪気に微笑まれたら、返す言葉は何もなく。
疲れたしもう寝るわと一言捨て台詞を吐いてから、ひょろりと細長い相棒を伴って自室へと引き籠った。
サイドテーブルに鉢を置くと、じわりじわりと広がる芳香。
濡らしたタオルで顔と手足を拭いながらほうっと息を吐いた。
(押し付けられたのには参ったけれど)
すぅと深く息を吸い込んで、吐いて。まんざらでもないと感じている自分に苦笑をひとつ。
(せっかくの心遣い、ありがたく受け取っておくとしましょ)
凝り固まったこころを蕩かすような、
高貴で優雅な紫の夢が見られる気がする。
友情出演:ビアンカ・ノウトステイト(a74882)
イェナ・ヴェールダンス(a71774)
1stキャラ。
かな~り長い間一線を退いていたが、何を思ったかフラリと復活。
性格、外見、口調がガラリと変更に。
テンション上昇のオマケとしてKY度が上昇中。
◆好:酒、お祭り騒ぎ
◆嫌:露出の多い服、頭を使う話
【冥戒・イザナミ】(右)
2ndキャラ。
前衛職やってみたいーという欲から突発的に生まれた娘。
クールどころか徐々に徐々に、のほほん系へ進化中。
◆好:可愛いもの
◆嫌:辛い食べ物、裁縫、調理
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