涕涙ステラ ( http://am0ur.web.fc2.com/noir/ ) さんより頂きました。
【君に、 5のお題】
01 願 う 前 に 、
ぴっちょん、ぽとん・・・・・・
発狂しそうなほどの静けさの中に、先ほどから天井から落ちる水滴の音だけがただただ響いている。
ほぅっとため息をひとつ吐いてから壁に背を預け、息を殺してその場にうずくまった。
(こんな時に敵にぶち当たりたくはないわね)
耳を澄ませば、この場所からあまり遠くはない所でアンデッドモンスター特有の足を引き摺る足音が聞こえた。
(角を曲がって・・・あぁ、大丈夫。こちらには来ないわ)
張り詰めていた神経を少しだけ緩めて汗を拭う。
物憂げに首を巡らせて隣を見遣れば、相方が同じように膝を抱えている。
その顔もまた疲労を色濃く表して、冴えない表情だ。
ここはとあるドラゴンズゲートの最下層一歩手前。
下層にに繋がる階段が見当たらずに、私たちはもう長いことこのフロアをぐるぐる歩き回っている。
ほとんど攻撃アビリティを搭載していた医術士の私の、数少ない回復アビリティは先の戦闘でついに切れた。
口には出さないけれど、もしかしたら相方のアビリティも尽きているかもしれない。
敵に見つからないようにとカンテラの光量を絞る。ゆらりと小さな紅の炎が揺らいだ。
闇の領分が広まって、得体の知れぬ黒が体にまとわりついてくる。
あぁ・・・気持ち悪い・・・・・・
「・・・ねえ、ここから無事に帰れると思う?」
ようやく口を開いた相方は、この状況に似つかわしくはない・・・どこか楽しげな笑いを口の端に忍ばせてささやき声で問いかけてきた。
「笑い出したいくらい、絶望的な状況なんだケド?」
「まぁ、その気持ちはわからなくもないわね」
やれやれ・・・よっこいしょ、と年寄りじみた掛け声と共に腰を上げた。
「あれよ、ほら・・・『願えば叶う』って」
そんな楽観的なセリフを口に上らせれば、
「あんたって人は全くもって、物事深く考えないタチだねぇ」
「うるっさいわね、ネガティブ一直線で凹まないだけまだマシよ!」
はんっ、と鼻息も荒く啖呵を切ったら、蒼髪の同行者はからからと声を立てて笑った。
「さて?」
彼女もまた気だるそうに立ち上がってぽんぽんと着物の汚れを払っている。
「おいでなすった?」
「多分ね」
あごで示した方向から、足を引き摺る重い足音が近づいてきた。
「願わくば、二人一緒に無事に帰りたいものね・・・っ!」
杖を構え、呼吸を整えながら背後に声をかけたら、相方がまた声を立てて笑った。
「願う前に、やることやらないと。・・・ヴィヴィ、あたしら術士は術が切れた時こそが勝負だよ」
茶化すような物言いに真摯な思いを込めて。
隣に立ち着物の袖を捲り上げ、杖と盾を構えた彼女は、とても眩しかった。
「・・・いやん、イェナちゃんカッコいい☆」
「うふふふー、あたしに惚れると怪我するよん・・・なんてね。来るよ!」
暗がりの奥で、モンスターの鈍い眼光がこちらを向くのが見えた――・・・
◇ ◇ ◇
イ「そういえば・・・ごめん、あたし癒しの水滴奥義使えたワ」
ヴ「そういうことはもっと早く気付いて―――!!」
友情出演:イェナ・ヴェールダンス(a71774)
1stキャラ。
かな~り長い間一線を退いていたが、何を思ったかフラリと復活。
性格、外見、口調がガラリと変更に。
テンション上昇のオマケとしてKY度が上昇中。
◆好:酒、お祭り騒ぎ
◆嫌:露出の多い服、頭を使う話
【冥戒・イザナミ】(右)
2ndキャラ。
前衛職やってみたいーという欲から突発的に生まれた娘。
クールどころか徐々に徐々に、のほほん系へ進化中。
◆好:可愛いもの
◆嫌:辛い食べ物、裁縫、調理
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