頭が痛い。体が重い。
気だるくて、熱っぽくて、あぁー・・・吐き気もする、気がするわ。
『病は気から、って言うだろう。ただの夏風邪で大げさな奴だ』
カノジョは私の額の上にある濡れタオルをポンポン叩いて、ふっと見下ろしてきた。
『とにかく安静に・・・』
「わかってるわよ」
嫌味や皮肉を言うのも億劫だ。
(私らしくもない、っていうか、これ相当ヤバイのかも・・・)
微妙に熱気の籠った息を吐き出して目を閉じた。
くるんと世界が回る。
ぐるぐる、ぐるぐる。
横になっているはずなのに、立っているのかそれとも倒れているのかと疑い出せばきりがない。
あぁ、頭痛い。
ふと風の流れを感じて重いまぶたを持ち上げれば、ベッド脇の窓が開いていた。
外の世界はいい天気らしい。
柔らかで穏やかな、晴れ渡る日の空が広がっている。
窓辺では白いレースのカーテンがふわりふわりと風を受けて裾を揺らしている。
ふわり、ふわり。
「・・・・・・ねえ」
カノジョは振り返って、何だろう? と言わんばかりにちょっぴり首をかしげた。
「私が死んだら、どうする?」
『・・・・・・それはまた・・・唐突にシリアスな質問だ』
「どうする?」
うーん・・・うーん、と唸る声がする。
視線を彷徨わせれば、窓辺のカーテンを追っていたカノジョの目が再び私に向けられた。
あぁ、またちょっぴり首をかしげてる。
『「悲しい」、思いをするのだろう』
「ありきたりね。つまんなーい」
ぷくっと膨れてみせたら、『病人は大人しくしていろ』と苦笑した声でたしなめられた。
『・・・いずれにせよお前さんはまだまだ死なんよ。地獄の親玉が顔しかめて追い出すだろうさ』
「あら、私ってば地獄行き決定なの?」
『天上の神が諸手を上げて歓迎してくれるとでも?』
「それはないわねー」
私悪い子だからー。茶目っ気たっぷりに応えると、忍び笑う声が聞こえる。
ふと見上げると、カノジョは濡れタオルが気になるらしくて再びポンポンと軽く叩いてきた。
調子に乗ってもう一言、声を絞り出す。
「まぁ、世界中のお酒を飲み歩いてからね。死ぬのは」
今度は呆れたようなため息と『いい加減寝ろ』という幾分怒気の籠もった声が耳に届いた。
慌てて毛布を被り直す。
死ぬ前に、ね・・・
もしもの話だけれど、私がこれで死んじゃうとしたら―――
ちょっと一言、言っておきたいことがある。
「・・・イェナちゃん」
『ん?』
「頼むから、ヘリウムガス吸い込んだ声とその口調で、私の召喚獣にアテレコしないで・・・」
友情出演:イェナ・ヴェールダンス(a71774)
「カノジョ」こと召喚獣(ドール、名前未定)
1stキャラ。
かな~り長い間一線を退いていたが、何を思ったかフラリと復活。
性格、外見、口調がガラリと変更に。
テンション上昇のオマケとしてKY度が上昇中。
◆好:酒、お祭り騒ぎ
◆嫌:露出の多い服、頭を使う話
【冥戒・イザナミ】(右)
2ndキャラ。
前衛職やってみたいーという欲から突発的に生まれた娘。
クールどころか徐々に徐々に、のほほん系へ進化中。
◆好:可愛いもの
◆嫌:辛い食べ物、裁縫、調理
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